美しい栗毛の馬体を一糸乱れぬ完璧なフォームで弾ませて、直線をまっすぐ突き抜ける。ゴール手前で勝利を確信した名手の右手が早々と挙がり、その瞬間、第67代桜花賞馬ダイワスカーレットが誕生した。名馬誕生の瞬間を目にした感動に心が震えた。
成績・レース映像
http://jra.jp/datafile/seiseki/g1/ouka/result/ouka2007.html勝利騎手インタビュー
http://jra.jp/JRADB/asx/2007/09/200702090611w.asx全周パトロール
http://jra.jp/JRADB/asx/2007/09/200702090611a.asx3強対決と言われていた今年の桜花賞。オッズは単勝1倍台のウオッカが断然人気でついでアストンマーチャン、ダイワスカーレットは単勝5.9倍の3番人気でしたが、直線ではその3頭が並ぶシーンもあり、一瞬3強で決まるかに思えました。しかし、アストンマーチャンはそこから伸びずに失速、先に仕掛けたダイワとウオッカの一騎打ちとなり結局最後まで脚色衰えることなく伸びきったダイワが勝ち、ウオッカが2着、3馬身以上はなされてカタマチボタンが3着に飛び込んだという結果になりました。
なんといっても、ダイワスカーレット、本当に素晴らしかった。パドックでの馬体はまさしく究極のデキで牡馬と見紛う筋肉の鎧をまといつつ、品のある芸術品のような華麗さを併せ持つ輝くような馬体。これまでそれなりに多くの馬の馬体を見てきましたが、牝馬でこれだけのバランスと筋肉、完璧に調和のとれた馬体を有した馬はいませんでした。それは新馬戦でパドックを見たときから感じたことで、
「この馬はいずれGIを勝つ」と呟き、ブログでも再三この馬について触れてきました。信じていたことが現実となったのは素直にうれしいです。今回のレースの直線での走りを見て、自分としての理想の競走馬、その一つの型を確認できたという思いがあります。上でも触れましたが、直線ではほぼまっすぐに伸び、手前を変えてからまったくフォームの乱れもなく最後まで脚が変わらない美しい走りを維持していました。これは馬体のバランスと筋肉、そして馬自身のもつ心肺機能のすべてがかみ合ってひとつになった結果です。基本的に馬体からはマイルがベストですし、その思いは今も変わりませんが、すべての要素が完璧に調和が取れた今、仮にオークスの距離で他馬とまともにやり合っても、負けないのではないかという風にも感じます。マイラーとして完成されているのではなく、競走馬として完成されているということです。珍しくアンカツが早々とガッツポーズをしたのも印象的でした、鞍上も自分の信じた馬、それが名馬であると心から確信したのではないかなと勝手に思って一人で感動してました。
敗れたウオッカ。負けてなお、強しといったところか。ダイワやアストンが外枠からかなり長い間外目を走って先行したのに対し、早々と内目につけて後方から折り合いのついた同馬。ペースは遅く、ゆるい流れを早めに動いてチューリップ賞と同じような展開、流れで直線でダイワに並びかけようとするところまではまったく一緒。ただ今回はダイワのアンカツは、ウオッカが並ぶまで待ってはくれなかった。ほぼ同時に追い出してもなかなかその差は縮まらず、逆に追い出すとウオッカは寄れたりする仕草をみせて自らダイワに接触してしまうようなシーンもありました。結局一度もダイワに並びかけることもできず、逆に最後は突き放されてのゴール。鞍上の四位騎手は「弾けなかった」とコメントしていますが、あの上がり勝負で2頭とも3F33秒台の末脚を使っているわけで、あれをさらに速い脚で差しきるのは至難の業。ウオッカが勝つためには直線向いた時点でダイワに並んでいなくてはいけなかったわけで、それができなかった、させなかったダイワの強さということでしょう。ただ、ウオッカも直線向いて追われてからフラフラしてフォームもいまいち安定していなかったので、個人的にはまだ馬自身完成しきっていないなという印象を受けました。それでも後続をあれだけ千切るんですから相当強いですが。パドックではやはりどこか緩さを感じさせる馬体で、
馬体チェックでの評価通り、まだ成長の余地を感じました。スマートでゴツさのない馬体は距離伸びてより良いと感じますし、オークスのほうが更に向いているとハッキリ思いました。
3強の中では唯一、圏外に沈んだ2番人気のアストンマーチャン。ただ7着といっても実際はラスト100mで一気に後続に交わされたもので着順の印象ほど負けてはおらず、むしろ最後の直線もギリギリまで踏ん張ったなという印象でした。馬体の印象や走るフォームから散々言ってきたとおり、距離が1,2F長かったかなというのが率直な感想です。パドックからすでにテンションが高く、実際のレースでも掛かって外枠から前に持っていかれました。ただ鞍上もいうとおりスローペースの先団につけて理想的なポジション、そこからは比較的折り合いもついての追走だっただけに、最後の最後で伸びなかったのは距離かなというのはそのとおり。ゴール後のクールダウンで重戦車のような馬体を弾ませて走る姿をみて、「どうみてもスプリンターだよなぁ」と思いました、レースを重ねるごとにその傾向が強くなった気がします。陣営はオークスは使わず、次はNHKマイルを視野にいれているようですが、それでも距離が微妙という風に考えているようです。個人的には秋のスプリンターズSを目標にすればかなりいい結果が得られるのではないかなと思っているのですが、とにかく能力はこの馬もハイレベルで決して単なる早熟馬ではないと思います。
ところで今回の桜花賞、競馬ファンにはかなり注目を集め3強対決でかなり盛り上がりました。ただ、馬券の売り上げは芳しくなく、前年比90%程度に留まりました。僕は間違いなく今年も売り上げが下がると確信していました。3強で馬券妙味が薄く、購買意欲が薄れたというのもありますが、入場者数が増えていることからも、レースのおもしろさや盛り上がりが馬券の売り上げに直結しないということがハッキリと証明されたと思います。馬券の売り上げが下がっているという問題は、さまざまな要因の複合的な結果だと思いますが、一番の原因はファンの馬券の買い方が変化したこと、もっといえば客単価の売り上げが下がっていることなのではないでしょうか。この件に関しては、いずれ詳しく触れてみたいと思います。
さて、これでオークスは2強対決となることが決定しました。その他に忘れな草賞をかったザレマや、オークストライアルで権利取るのを条件にベッラレイアなどの伏兵候補がいますが、現時点では2頭の強さは例年と比較しても相当高いところにいると感じます。距離が伸びて他馬に付け入る隙が生まれるのか?それともやはり強い馬が強いのか?楽しみはつきませんね。個人的にダイワはPOGで他人に持たれているので本当はアレなんですが・・・、それでも自分が素晴らしいと思った馬が活躍してくれるのは嬉しいことですし今後も応援していきたいですね。来週は調教師、騎手とも同じコンビのフサイチホウオーが皐月賞に挑みます。こちらもデビューから期待していた馬、勢いのある陣営に是非とも連勝を期待したいです、っていうか勝ってくれないとPOGの採算が・・・。とにかくがんばれ!